突風

この世で無欲な人は例え存在していても、
とても少ない。
世の中は、社会的にも個人的にも、
すべてはその欲のために動いている。
国家の利益ーそれは国単位での欲望。
個人の利益ーそれも個人単位での欲望だ。
利益という文字を使うと、
少しそのイメージが違ったように聞こえるが、
その中身の本質は、どろどろとした醜い欲望以外の何でもない。
国を運営していくためには、
その国の利益を阻害されないように、
また国に、より多くの利益がもたらされるように、
国益確保ということは、
健全な国の運営のための重要な要素だ。
だからと言っても、国として、
他国の利益に無理やり食い込むような形で、
他国に類を及ぼす拡張政策はいただけない。
自国の利益拡大のために、
他国が被害をこうむることを是としない。
言うまでもないことだ。
いま中国は、東シナ海でも、南シナ海でも、
自国の権益拡大のために動いている。
利害の対立する国々は、
その理不尽な行動に異議を唱えている。
でも、
中国の感覚や認識でものを言えば、
その種の他国への勝手な膨張拡大主義は、かの国の国是。
それを自然体でやるし、
悪いことをしているという意識はまったくない。
それは、客観的に見れば、
どう見ても、他国への不法な領土侵略だ。
ところが、
それを実質的に取り締まる能力のある機関はない。
アメリカと言えども、
いまや軍事的にも経済的にも強大な国に成長した中国を、
自分の思うようには出来ない。
だからと言って、
やりたい放題にさせてはいけない。
中国はいまだにものすごい勢いで軍事力の増強を図っている。
軍事力という後ろ盾がないと、
自国の望む外交が出来ないことをよく知っているからだ。

翻って、日本はどうだろうか。
日本はいつまでも平和ボケしている場合ではない。
自分から攻めて行かなければ、攻められることはないと、
何故か錯覚している。
国の安全や利益は、自国の力で守るもの。
そんなこと、言うまでもないこと。
その為には、
他国の干渉や侵害を打ち破る実力を持たねばならない。
現実に中国は何をするか分からない一番の脅威だし、
尖閣諸島や沖縄を明確に狙っている。
北朝鮮も大きな脅威で、いまだ拉致問題は未解決のまま。
韓国とは竹島が問題になっている。
ロシアとは、北方領土問題が一向に解決に向けて進展しない。
それらすべては、明らかに日本がなめられているからだろう。
関係当局はきちんと主張すべきことを主張し、
努力のあとが見られるが、いまだ果実を手に出来ないのには理由がある。
戦後間もないどさくさの時代に、ソ連が取った不法行為を改めさせるのに、
日本側に力不足がある。
その力不足を補うためには、
中国のように、
自国の実力を高める努力をすべきだろう。
世界を良くするためには、実力を伴う必要がある。
実力の裏付けのない、単なる言葉だけによる運動だけでは、
何も勝ち取ることは出来ない。
だから、
実力の高揚を図るべきで、
その為の国内の法的整備は、早急にする必要がある。
現政権には、その努力の兆候が見られるので期待したい。

平和は無料で向こうから勝手にやって来ない。
平和は実力で勝ち取るもの。
世界は常にあちこちで紛争が絶え間なく発生している。
それが、一般的な常態なのである。
その常態を前提に、
日本も自国の安全と国益確保に動かなくてはならない。
現実から顔を背けることなく、
大きく目を開いて直視する。
いつまでも、根拠のない夢見心地でいることなく、
早急に適切な行動を取る必要がある。
今般閣議決定された、国家安全保障会議に向けた動きが、
単にテロや災害などへの即応体制にとどまらず、
本格的な国の本質的総合安全保障機能へとつながることを望む。
実務やその制度構築には色々問題はあるようだけど。